みっちー日記(Enjoy編)

楽しい人生の記録

「37セカンズ」あらすじと感想:障害のある女性が演じる主人公はリアルだった

この映画を観たいと思ったきっかけは、実際に障害のある方が演じるということだった。

 

脳性麻痺のため車椅子生活をいている人が主人公を演じるということを知り、どうなんだろうかという好奇心が湧いたのだった。

 

私が邦画を観る率は洋画に較べて圧倒的に少ない。むしろ邦画より韓国映画やインド映画のほうが好きだったりもする。

 

しかし、結論から言うと、この作品は観てよかったなぁと思った。そればかりか、この作品は多くの人に観てほしいとさえ思ったほどだ。

 

というわけで、今回は「37セカンズ」の感想を書いていく。

 

 

 「37セカンズ」:作品情報

 

【公式ツイッター

twitter.com

 

監督・脚本はHIKARIさん。失礼ながら私にとっては未知の監督さん。公式サイトによると

ユタ州立大学にて舞台芸術・ダンス・美術学部を学び、学士号を取得後、ロサンゼルスに移住。女優、カメラマン、アーティストとして活躍後、南カリフォルニア大学院(USC)映画芸術学部にて映画・テレビ制作を学ぶ。

とあり、映像についてかなり専門的に学んだようで、この作品はHIKARIさんにとって長編デビュー作だそうだ。

 

デビュー作でありながら、2019年3月に「第69回ベルリン国際映画祭」で、「パノラマ観客賞」と「国際アートシネマ連盟(CICAE)賞」をW受賞。ベルリン映画祭史上初の2冠というのだからすごい才能だ。

 

また主人公の貴田ユマを演じたのは佳山明さん。彼女は出産時に脳性麻痺のため障害を持ち実際に車椅子生活である。監督の意向によりオーディションで100人の応募者から選ばれたとのこと。実際に障害を持っている女性が演じることにより、作品のリアリティさが高まっている。

 

 

「37セカンズ」:あらすじ

 

ユマ23歳。職業「ゴーストライター」。

生まれた時に、たった37秒息をしていなかったことで、身体に障害を抱えてしまった主人公・貴田ユマ。

親友の漫画家のゴーストライターとして、ひっそりと社会に存在している。そんな彼女と共に暮らす過保護な母は、ユマの世話をすることが唯一の生きがい。
毎日が息苦しく感じ始めたある日。独り立ちをしたいと思う一心で、自作の漫画を出版社に持ち込むが、女性編集長に「人生経験が少ない作家に、いい作品は描けない」と一蹴されてしまう。

その瞬間、ユマの中で秘めていた何かが動き始める。これまでの自分の世界から脱するため、夢と直感だけを信じて、道を切り開いていくユマ。その先で彼女を待ち受けていたものとは…

 (公式サイトより引用)

 

簡単に言うと、

障害を持つユマが親や社会から自立し、自分の力で外の世界を見てみようとした

というストーリー

 

 

感想

 

一番思ったことは、私はまだまだ障害のある方に対しての理解が不足していたということだ。

 

たぶん、社会全体でもそうだろう。

 

母親から自立をしたい主人公

まず、主人公の貴田ユマが親友の漫画家のゴーストライターというのがひどい。障害者だから影に生きているのだろう。なんとなく、この親友も「自分のほうが立場が上」みたいにふるまっているように見える。

 

そしてこれが話の肝となるところだが、ユマは生まれたときに37秒息をしていなかった。そのため障害を抱えて生きていくことになる。脳性麻痺のため、体が自由に動かない部分があり車椅子生活を余儀なくされたのだ。

 

足が不自由なのと、手が少しだけ不自由なせいで、日常生活がとても大変。したがって、母親の助けがかなりの部分で必要になる。

 

その母親がまた過保護だ。だが、障害のある娘が社会の荒波に飛び出して、もしものことがあったら大変だ。過保護なのも無理はない。

 

だが、大人だというのに母親の手を借りなければ生きていけない自分を、ユマはいやになる。だから母親から自立したくなったのだ。

 

誰かの手を借りなければ生きていけない。しかし、自立をしたい。そんな気持ちを抱えたユマはあることがきっかけで、今までとはちがう世界を知ることになる。彼女は思わず母親の手から離れてしまったのだ。

 

そこから物語は大きく転換していくのだが、ここからが見どころが多くなっていく。

 

障害者の性までも描写

この作品には、障害者の性にまで触れている。障害者で、しかも女性の性の話だから、なんとなく触れてはいけないタブーのような感じがする。しかし、作品中には遠慮なくそういったシーンも描かれている。

 

大人のおもちゃを買いに行ったり、ホテルに男性と行ったりと、そんな描写がされていたのには驚いた。ずいぶん思い切ったものだ。

 

リアリティが半端ない

主人公ユマ役の佳山明さん、彼女は実際に脳性麻痺で、障害を抱えた女性である。オーディションで、約100名の中から選ばれて主役に抜擢されたのは前述のとおりだ。

 

本当に車椅子生活をしている人が、障害者を演じているのだ。そのせいで、とてもリアリティのある作品だった。本物が演じているのだから、やっぱり本物だった。

 

帰宅時に玄関から家にあがるとき、外出用の車椅子から家用の車椅子の乗り換えるのだけでも大変そうだ。お風呂場まで行き、車椅子を降りて衣類を脱ぐこともまた大変だ。とにかくひとつひとつの動作にリアリティを感じる。

 

だからこそ、作品全体に緊張感があり、違和感もない。

 

また、観ていて切なくなるシーンが何回も出てくるけど、この作品は、一層切なさが強かった。

 

それが本物ということだろう。

 

 

最後に(満足度)

 

観終わって感じたのは、いろいろ詰まった作品だなぁということ。障害者と健常者というテーマはもちろんあるだろうが、それだけではない。

 

障害者の性についても触れられており、障害者の自立心が描かれており、そして家族についての物語もある。

 

いろいろ思ったが、一番痛切に思ったのは、「私は、障害者のことを全然理解していなかった」ということだ。

 

頭ではいろいろわかっているつもりだが、心ではまだわかっていない。障害のある方と接した経験があまりないので仕方がないと言ったらそれまでだが、そんな自分がなんとなく恥ずかしい。

 

この作品を観て、私は少しだけ障害のある方気持ちに触れられた気がした。これを機に、もっと障害のある方を理解していきたいと思う。

 

そして、多くの人にこの作品を観てほしいと思う。まちがいなく、今年観とくべき作品の一つであろう。みんなにおすすめしたい。

 

満足度 ☆☆☆☆☆(☆5つ)