「スウィング・キッズ」感想と満足度:華やかなダンスと衝撃的なラスト

予告を観て「これは観に行かなきゃ」と思っていたのが「スウィング・キッズ」。その判断はまちがってなかった。

 

タップダンスを思わせるポスターが、楽しそうな映画だと連想させる。

 

でも、実際に観てみたら、単純に楽しいだけではなかった。そこには当時の時代背景が色濃く反映されていて、朝鮮半島の闇を覗くことになってしまったのだ。

 

今回は、この「スウィング・キッズ」の感想を書いていこうと思う。

 

 

作品情報

 

監督 

監督・脚本はカン・ヒョンチョル。私にとっては初見だが、「サニー 永遠の仲間たち」の監督である。この作品は日本でもSUNNY 強い気持ち・強い愛としてリメイクされている。 

 

出演者

主人公のロ・ギス役は「神と共に」シリーズに出演しているド・ギョンス(D.O.)。大人気らしいのだが、韓国映画や韓国ドラマはまだまだの私はよく知りません。今度、しっかり勉強しておこうと思う。

 

ダンスチームであるスウィング・キッズのリーダー、ジャクソン役はジャレッド・グライムス。彼はブロードウェイのダンサーでオバマ元大統領のための公演でメインダンサーとして活躍したことがあるという本格派。作品中のタップダンスが素人目でもすごいとわかるくらい凄まじかった。

 

なお、ドギョンスとジャレッド・グライムスのダンス対決みたいなシーンもあるが、もう圧巻だった。あのダンス、マジですばらしかったなぁ。

 

その他、パク・ヘス、オ・ジョンセ、キム・ミノと言った俳優が出演。

 

なお、この作品、韓国では公開からわずか9日で観客動員100万人を達成したらしい。1日に10万人以上の人が観たと考えるとかなりすごい。

 

 

あらすじ

 

1951年。朝鮮戦争当時、最大規模の巨済(コジェ)捕虜収容所。

新しく赴任した所長は収容所の対外的なイメージメイキングのために、戦争捕虜たちによるダンスチーム結成プロジェクトを計画する。

収容所で一番のトラブルメーカー ロ・ギス、4か国語も話せる無認可の通訳士 ヤン・パンネ、生き別れた妻を捜すために有名になることを望み、愛に生きる男 カン・ビョンサム、見た目からは想像できないダンスの実力を持った栄養失調の踊り手 シャオパン、そして彼らのリーダーであり元ブロードウェイのタップダンサー ジャクソンまで、紆余曲折の末、一堂に会した彼らの名前はスウィング・キッズ!

それぞれ異なる事情を抱えてダンスを踊ることになり、デビュー公演が目前に迫っていた。国籍、言葉、イデオロギー、ダンスの実力、全てがちぐはぐな寄せ集めダンスチームは前途多難でしかないが…。

 映画『スウィング・キッズ』公式サイトより引用。

 

簡単にいうと、

朝鮮戦争による北朝鮮の捕虜たちがダンスチームを結成し、紆余曲折の末にそのダンスを披露する

というストーリー。 

 

 

感想

 

捕虜たちの華麗なるダンスによるサクセスストーリーかと思いきや、胸が苦しくなるくらい辛いお話でした。

 

南北朝鮮のイデオロギーの戦い 

この作品はダンスの話であるとともに、朝鮮戦争時の南北朝鮮のイデオロギーの話でもある。だから単純にダンスの話というわけにもいかなかったようで、とても重苦しかった。

 

共産主義対資本主義といっても、私の世代では、すでにピンと来ない。だから作品を観てもそのイデオロギーの戦いを体感できなくてもったいなかった。

 

イデオロギーというとちょっとむずかしいが、簡単にいうと、北朝鮮の人々にとって、アメリカのものや娯楽は、受け入れてはならないものだったということだ。

 

たとえばチョコレートを食べたらアメリカっぽいし、タップダンスを踊ればそれもアメリカっぽい。アメリカっぽいことをやるだけで、資本主義の仲間だとみなされてしまうのだ。

 

主人公ロ・ギスの苦悩

主人公ロ・ギスは前線で戦って英雄扱いされている者の弟で、生粋の共産主義者のはずだった。ところがアメリカ人のダンスを見て心を奪われてしまう。しかも自身にダンスセンスがある。

 

彼は踊りたくて踊りたくてたまらなくなる。もちろんアメリカのダンスを踊ってしまえば裏切り者も同然

 

そこでロ・ギスの苦悩が始まる。

 

しかも、ロ・ギスにはダンスの仲間までできてしまう。ともに捕虜となった同志たちと、このダンスチームの狭間で心がかなり揺れる。

 

その様子を見ていたら、かなり心が苦しくなってしまった。マジで理不尽なことばかりだったから。

 

戦争は世界を理不尽なものにするが、この朝鮮戦争もやっぱり理不尽だった。

 

しかもアジア人を見下しているアメリカ人が絡んだ映画だからよけいにムカついてきた。

 

華やかなダンスと衝撃的なラスト

全体的にダンスありお笑いありなのだが、基本は胸が苦しくなる話である。

 

観る人は、少しだけ覚悟しといたほうがよい。

 

しかし、ダンスはとても華やかでよかった。スウィング・キッズの5人組によるタップダンスも見どころの一つだ。

 

とくにロ・ギスを演じたギョンスは演技もダンスも素晴らしかった。観ていて心が踊ったからね!

 

彼が韓国のアイドルだったとは知らなかったが、日本のアイドルではこうはできないだろうと思う。

 

ただ、ラストは衝撃だった・・・

 

全体をとおして、韓国映画がなぜすごいのかという一つの答えを見た気がした。

 

 

「スウィング・キッズ」鑑賞後に感じたこと

 

この作品は共産主義と資本主義のイデオロギーの戦いが根底にある。

 

ところがイデオロギーというのは国家レベルの大きな考え方であり、個人としては北も南も本質は変わらない。

 

その証拠に、北の人も南の人も、悲しいときは悲しいし、美味しいものは美味しいと思うし、恋する心だって持っている。

 

同じ人間なのだ。

 

さらに、作品中で、アメリカ人は朝鮮半島の人を見下していたが、欧米人とアジア人だって、同じ人間である。

 

そういうのって、本当にくだらない考え方だ。

 

どの考え方が優れているとか、どの民族、どの人種がすばらしいかなど、どうでもいい。みんな同じ人間なんだから。

 

いまの世の中になっても、なお、白人はすばらしいとか、ある宗教以外はダメだという考え方がある。

 

なんとかならないものかって思ってしまう。

 

みんな同じ人間だとみんなが思えば、もっと平和になるんじゃないかな。

 

 

満足度 

 

完成度はすごく高かったと思う。したがって・・・、

☆☆☆☆(☆4つ)

ダンスもストーリーもよかった。個人的には満足度がとても高い。韓国映画が好きな人は必見だと思う。

 

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