2020年の本屋大賞受賞作品は凪良ゆうさんの「流浪の月」だった。
それほど読書家ではない私だが、全国の書店の店員が選ぶという本屋大賞は注目している。なぜなら大賞を受賞した作品にはずれがないからだ。
だから読む前から「流浪の月」はおもしろいにちがいないと思っている。
昨年は2019年は瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」だった。これも文句なくおもしろかった。
参考記事:「そして、バトンは渡された」(瀬尾まいこ)の感想:家族とは何か考えさせられた
2018年は辻村深月さんの「かがみの孤城」、2017年は恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」。どれも文句なしの作品ばかりである。
そして、2020年は凪良ゆうさん「流浪の月」。一度も読んだことのない作家だ。しかし、本屋大賞を受賞した作品がつまらないわけがない。それを確かめるために私はさっそく読んでみた。
今回は、この作品の感想を書いていくことにしてみよう。
「流浪の月」作品情報
著者
凪良ゆう(なぎらゆう)
滋賀県生まれ
小説家。
2006年、「小説花丸」に「恋するエゴイスト」が掲載される。
翌年、長編「花嫁はマリッジブルー」で本格的にデビュー。
その後、BL作品を精力的に刊行してきた。
2020年、「流浪の月」で第17回本屋大賞を受賞。
あらすじ
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。
わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。
再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。
(Amazon、「商品の説明」より引用)
内容を簡単に説明すると、
過去にやらかしてしまった事件がきっかけで何年も会えなかった二人が再会し、再び困難な道を歩んでいく
というストーリー。
といっても、このあらすじだけでは想像もつかない内容だ。Amazonの内容紹介を読んだとき、よもやこんな内容とは思いもよらなかった。できれば、ネタバレ解説なしで作品を読んでほしい。
「流浪の月」の感想
これほどまでに次のページをめくりたくなる作品ってあっただろうか、と思えた内容。読んでいて何度も心が苦しくなってしまった。
更紗という少女
主人公の家内更紗はやさしい父と自由な母によって、おおらかに育てられた。そのため更紗は自由奔放なのびのびとした子どもになった。ところが世間は「変な家の子」と見なし、「変わり者扱い」を受けていた。それが更紗という少女。
更紗の不幸のはじまり
その更紗、父がいなくなり母がいなくなり、伯母の家に引き取られることになる。ところがそこではうまくいかない。小学校でも浮きまくることになる。そしてとうとう自分を抑えて生きていくことになったのだった。
それが、彼女の不幸のはじまり・・・。
佐伯文という男
そんなときに出会ったのが、佐伯文という男性。はっきり言って文という男は正体不明。ただし、更紗とは正反対の育てられ方をしてきた。育児の教科書どおりに育てられ、更紗とのギャップが激しい。が、文はだんだん更紗に感化されるのであった。
二人はふつうとちがう出会い方をしてしまった
更紗と文。二人の接近は通常とはちがう接近の仕方だった。そのため、二人は離れ離れになってしまう。
その引き離され方は、見ていて苦しくなってしまった。「いや、ちがうんだよ、それはちがうんだよ」と、事情を知っている私は物語に入り込んで説明したかったほどだ。
そして再会する
再会すべきではない二人がまた出会った。そこからまた苦悩が始まる。
はっきり言って二人は全然悪くないのに、まわりはそう見ていないのが苦しい。
更紗と文の内面
そんな二人の物語が進んでいき、そして二人の内面がだんだん浮き彫りになってくる。更紗はなぜ文とあんなにも気が合うのか、文はあのときこんな気持だったのかということが後にわかっていくところが、この作者のうまさなのかもしれない。
作者の筆力
そんな二人の物語の作者による語られ方がすごかった。これぞ筆力っていうものなのだという感じだった。読んでいて、「この展開なに?」とか、「これどうなるの?」とか思わず口にしてしまった場面もあった。「マジかよ~」と思ったところもしばしばある。凪良ゆうさんって本当にすごい作家だと思った。
まとめ
圧倒的な筆力をもって書かれたこの作品。私にとって満足度がかなり高かった作品だった。凪良ゆうさんの他の作品の読んでみたくなってきた。
本屋さんにいったらぜひ凪良ゆうさんの作品を物色してみようと思う。
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