「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ:人の心の根源はさみしさである

俵万智さんの短歌で有名なのがこちら。

 

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

 

たしか学校の教科書にも載っていたはず。

 

この短歌、めっちゃ共感しちゃうんだけど、多分みんなもだよね?

 

今回、この短歌について思ったことをみることにする。

 

よろしくお願いします!

 

 

「サラダ記念日」について

 

冒頭の短歌は「サラダ記念日」という歌集に収められている。作者は俵万智さん。彼女が初めて出版した歌集だ。

 

 

1987年に初版が出たということなので、もうかれこ30年以上も前の作品だということだ。

 

どうやらこの歌集、発売される前から話題になっていたらしい。

 

だから、発売後にはあっという間にベストセラーになった。

 

ちなみに1987年のベストセラーランキング1位は「サラダ記念日」だ。

 

歌集が年間ランキングの1位になるというのはとてもめずらしいのではないかと思う。

 

なお、タイトルの「サラダ記念日」は次の短歌からとったもの。

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

 

この中の「君」ってだれなんだろうね?

 

ところで、俵万智さんは、私の高校の時の国語の先生と同級生だそうで、先生からこの歌集を紹介された。

 

口語で書かれていたため、高校生の私にも内容がわかりやすかった記憶がある。

 

他にもたくさん好きな短歌があるが、一首だけご紹介。

万智ちゃんがほしいと言われ心だけついてきたい花いちもんめ

 

花いちもんめという遊び、むかしやった記憶がある人も多いと思う。

(いや、今どきやらないか)

 

向こう側に好きな人がいて、あっちに行くわけにはいかないのだが、心はついて行きたいという乙女心だね、これは。

 

こういう繊細な心を詠んだ歌が「サラダ記念日」には、たくさんあるんだよね!

 

 

「寒いね」と話しかければ・・・、の感想

 

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

 

この短歌の意味は比較的簡単で、説明はそれほどいらない。

 

季節は冬。

外か室内かはわからないけど、男女(たぶんカップル)がいる。

 

どちらかが「寒いね」と話しかけて

もうひとりが「寒いね」と答えている。

そういうのって温かいねっということである。

 

この場面をどのように想像するかは読者の自由。

 

公園のベンチかもしれないし、部屋の中でこたつに入ってるのかもしれない。 

 

男女は、夫婦かもしれないし、まだ付き合いはじめたカップルなのかもしれない。

 

たぶん、読む人それぞれの場面を想像するんだろうなぁ。

 

いろんな想像をさせる作品って心にとても響くよね。そういう意味でもこの短歌、私は好きだ。

 

短歌といえばかたっ苦しくて、難しいものと思っていたけど、俵万智さんのおかげで身近になった。

 

とはいえ、彼女のように口語で短歌を詠む人で有名な人は、まだいないような気がする。

(私が知らないだけかもしれないが)

 

ところで、なぜこの短歌が有名なのかというと、おそらく多くの人がこの短歌に共感できるからだろう。

 

例えばお部屋で

「寒いね」

と言ったら

「寒いね」

と返ってくる。

 

ごく当たり前の光景だ。

 

だけど、ひとりじゃないからこそ、こたえが返ってくるし、あたたかいわけである。

 

お部屋で一人

「寒いね」

と言ったところで、返事は誰からも返ってこない。

 

これはめっちゃ寒い。

 

一人でいること自体寒いのだ。

 

ちなみにわたし、一人暮らし歴何十年という寂しい男だ。

ベテランの独身男なのである。

 

家に帰っても一人。

食事も一人。

寝るのも一人。

何をするのも一人だ。

 

この年齢になると、新しい友だちなんてできないし、いたとしてもみんな家族サービスやら仕事やらで全然時間も合わない。

 

だからプライベートもたいてい一人で行動する。

 

外食も一人。

買い物一人。

映画を観るのも一人。

ときには飲みに行くのも一人の時がある。

 

本当に寂しい男なのである。

 

だから人一倍温かさを求めてしまう。ぬくもりっていうんでしょうか、心の温かさを常に欲している。

 

家に帰ってきて

「今日は寒いねぇ」

って言ったら

「マジ寒いよね!」

なんて返ってきたら、それだけで心が温かくなるにちがいない。

 

それなのに、私にはそう言ってくれる人はいない。なんとも悲しい男だな。

 

ときに私は思うのだ。

 

人間の心の根源は、さみしさだ

 

と。

 

さみしいから人は人を求める。

人といると温かくなる。

 

そして、人がいないとさみしくてさみしくてたまらなくなる。

 

私にも、いつか「寒いね」と答えてくれる人が現れるのだろうか。

 

もうそんな自信がないのだよ…。