2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうさん。受賞後に彼女がはじめて出版したのが「滅びの前のシャングリラ」だ。
本屋大賞受賞作品の「流浪の月」がすごくよかったので、あとに続くこの作品もかなり期待が高まった。
絶対におもしろいことは読む前からきまっている、そう思って読み始めたのでした。
今回、「滅びの前のシャングリラ」の感想を書いていきたい。
「滅びの前のシャングリラ」作品情報
著者
凪良ゆう(なぎらゆう)
滋賀県生まれ。
小説家。
2006年、「小説花丸」に掲載された「恋するエゴイスト」でデビュー。
2007年、「花嫁はマリッジブルー」が初著書。
2020年、「流浪の月」で本屋大賞を受賞。
あらすじ
「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして―荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、いまわのきわまでに見つけられるのか。圧巻のラストに息を呑む。滅び行く運命の中で、幸せについて問う傑作。
(Amazon商品の説明より)
1ヶ月後に地球が滅びる!?
これまで、満足した生き方をできなかった4人が、残り一ヶ月をどのように過ごしていくのか。
地球が滅びるまえに生きる意味を見出すのだろうか。
そんな4人(正確には5人かな)の物語。
「滅びの前のシャングリラ」の感想
圧倒的な筆力で書かれたこの作品。設定にもおどろかされたが、この人達はこれからどうなってしまうのだろうかということが非常に気になった。こういう極限状態での心の描き方がすごい。
作者の筆力が半端ない!
「流浪の月」を読んでいたときにも感じたのだが、この作品でも凪良ゆうさんの圧倒的な筆力を感じた。
物語はどんどん進んでいくわけだが、次に何が起こり、登場人物たちがどういう気持になるのか、続きが気になってしかたがなかった。
次はどうなる?
え?こうなるの?
そして、次はどうなるの?
読んでいてそんな状態だ。
「ページをめくる手が早くなる!」
これが、凪良ゆうさんの作品を読むときに感じることだ。彼女はぐいぐい読ませる人だ。
きっと物語の描き方がうまいからなんだろうなぁ。
物語の設定とその描写が半端ない
地球が滅びる1ヶ月前。その設定で何が書けるだろうか。ふつうはその設定だとSFものになる。
「地球を救え」「宇宙から飛んでくる隕石の進路を変更させよう」、そんな物語が生まれるはずだ。
しかし、作者が書いた物語は、地球が滅びる前に、一人の人間がどういう思いを抱き、どのように心が変わっていくのかという展開だ。
また、全部で4章の短編仕立てで成り立つ物語だが、その繋がり方にも驚かされた。
そもそも最初に登場する主人公の江那友樹が、クラスメイトを殺したという始まりから度肝を抜かれる。
どういう経緯でそうなっていったかが書かれるわけだが、またそれがおもしろい。途中、驚きの展開が待ち受けているわけだが、それを受けての第二章目もまた驚きだった。
物語の展開がスリリングで、あっという間に最後まで読んでしまった感じだ。
4人の人生の描き方がすばらしい
この物語は
シャングリラ
エルドラド
いまわのきわ
の4つの物語から成る話で、それぞれの主人公の目線で描かれている。
それぞれの主人公のこれまでの人生が描かれていて、現状どちらかというと世界が滅びたほうがいいと思っている人たちが主役なのだ。
その4人が、いざ地球が滅びるというときにどう動いていくのか、そこがとてもおもしろい。
本当は、ここでどんなところがおもしろいのか言いたいところだが、それは読んでのお楽しみ。
さらに、この4つ話はつながっている。とてもいい感じでつながっているのだ。最初、別々の話だと思っていたのだが、実はみんな同じ話なのだ。そこがすごいところだ。
そして最後はきれいに物語を終える。どんなふうに終わるかもお楽しみだ。
最後に
正直、凪良ゆうという作家は本当にすごいと思う。人に文章を読ませる天才だと思う。
こんなにぐいぐい読ませる人ってそうはいない。
また物語の展開にも同じことがいえる。なかなかこの展開を思いつく人はいないだろう。
凪良ゆうという作家に出会えて本当によかったと思う。