今や生活の必需品となっているスマホ。電車に乗っていても、駅のホームでも、カフェでもスマホを見ていない人を探すのが大変なほどだ。
私も例に漏れずスマホばかり見ている。みんなと同じように電車に乗っても、駅のホームでも、カフェでも。
朝起きて枕元にスマホがあるし、夜寝る直前までスマホを見ている。
もっと言えば、今後もこれまで以上にスマホを使いこなしたいとさえ思っている。
そんな私なのだが、この本を読んでから、ちょっとスマホに対する考え方が変わった。
「スマホ脳」、読み終わったあとの満足感というか、納得感というか、なんとも言えない感覚が自分をおそった。
ひと言で読後の気持ちを表すことはできないのだが、久々におもしろい本を読んだと思う。ものすごく自分のためになる本だと感じた。
そこで、今回は「スマホ脳」の感想を書いていきたいと思う。
「スマホ脳」の情報
筆者
アンデシュ・ハンセン(Anders Hansen)
精神科医。
『一流の頭脳』が人口1000万人のスウェーデンで60万部の大ベストセラーとなった。
名門カロリンスカ医科大学で医学を学び、ストックホルム商科大学でMBA(経営学修士)を取得。
(アンデシュ・ハンセン | 著者プロフィール | 新潮社参照)
出版情報
出版社:新潮社
発売日:2020/11/18
新書:256ページ
「スマホ脳」の感想
結論は「スマホはよくない」だが…
「スマホ脳」というタイトルから想像できるように、この本は、スマホが人間にとってどれだけ害になるかを説明した本である。
だが、スマホを使うデメリットを知ったことより、人間の脳あるいは身体の仕組みを詳しく知ることができたことがよかった。
「スマホ脳」は、精神科医によって書かれたもので、その内容は、人間のストレスや不安、記憶の仕組み、睡眠の必要性など多岐にわたっている。
例えば、人間は恐怖を感じた時にどうなるのかという説明がある。
恐怖を感じた瞬間に、脳はコルチゾールとアドレナリンを放出する指令を出す。心臓が速く強く打ち始め、筋肉に血液が送り出される。逃げるにしても、攻撃に出るにしても、最大限に力を発揮できるようにだ
なぜ心臓がドキドキするのか、これによってよくわかる。
目の前にちょっと強そうな人が現れた時、心臓の鼓動が早くなる。それは逃げるため、あるいは戦うための準備だそうだ。
心臓から筋肉に血液を送り出すために、急激に心臓の鼓動が早くなるのである。逃げるにしても戦うにしても、どちらにしても筋肉を使うからだ。
こういった人間の身体の仕組みが、多岐にわたって説明される。ひとつひとつ詳しく解説されて、その積み重ねの後に、スマホに関する説明となる。
そしてそれが腑に落ちるわけだ。
「人の身体の仕組みってこうなっているのか!」という素朴な感動を何度もしてしまった。
他にも、ストレスや不安や緊張など、いろいろな説明が「スマホ脳」ではなされていて、非常に興味深く読むことができた。
スマホ依存になるメカニズムが興味深い
人間の脳内には伝達物質であるドーパミンというものが存在する。このドーパミンは厚生労働省の「e-ヘルスネット」という健康情報サイトでこのように説明されている。
神経伝達物質の一つで、快く感じる原因となる脳内報酬系の活性化において中心的な役割を果たしている。
(ドパミン | e-ヘルスネット(厚生労働省)より引用)
アルコールを飲んで快く感じるのは、実は脳内にドーパミンが増えたからなのである。
ちなみに、アンデシュ・ハンセンはドーパミンのことを次のように説明している。
ドーパミンはよく報酬物質だと呼ばれるが、実はそれだけではない。ドーパミンの最も重要な役目は私たちを元気にすることではなく、何に集中するかを選択させることだ。
例えば、目の前に食べ物が出てくると脳内のドーパミンが増える。脳が目の前の食べ物を食べろとささやくような働きをするわけだ。
というのも、食べ物は栄養を人間にもたらす重要なものだから、脳がそこに集中するように促すのだ。
ちなみにセックスによってもドーパミンは増えるらしい。人間は食欲や性欲にはなかなか勝てないというのもよくわかる。
なんだかこう書くと、ドーパミンは人間の根源の欲求を満たしたときに増えるようなイメージに思えてしまうが、それだけではない。
実は人間は新しい情報を得るとドーパミンを放出するとのことだ。それがニュースだろうとメールやSNSだろうと同じらしい。
ツイッターのタイムラインは新しい情報の宝庫だ。次から次へと情報が流れてくる。人間はそこから情報をゲットするとドーパミンを放出してしまうのだ。
だから人はSNSを気にするし、SNSから離れられなくなるのだ。SNSは一種の麻薬なのである。
これによって、スマホ依存が起きてしまう理由がわかった。私はスマホを見るたびにドーパミンを放出していたのだ。
スマホは集中力をなくす
筆者によれば、「私たちは一度にひとつのことにしか集中できない」らしい。
テレビを見ながら読書はできないし、運転をしながらテレビを見ることはできない。いわゆるマルチタスクはできないのである。
また、脳には切り替え時間も必要で、次から次へとやっていたことを切り替えていくのは困難なことらしい。
だから、本来ならば集中してひとつのことをやったほうがいいのだ。
子どもに、「テレビを見ながら宿題をしてはいけない」と躾けることは科学的にも正しいと言える。
ところが、どうやら人間はスマホがそばにあるだけで集中力を欠き、認知能力が低くなるらしい。
わかりやすく言うと、スマホがそばにあるだけで気が散るということだ。
人は集中をすると記憶力も高まるので、スマホがあるだけで記憶力の低下を招くということも言えるだろう。
私自身も、スマホがそばにあるとついつい見てしまう。やらなければいけないことがあったとしても、定期的にスマホに手が伸びてしまうという経験をしたことがある人は多いはずだ。
人間はもともと一度にひとつのことしかできないのだから、スマホを見えるところにおいたまま、勉強をしたり読書をしたりするのはよくないというわけだ。
人間の集中力をなくすのもスマホの弊害のひとつなのだ。
最後に
スマホを使用するにあたって、弊害だらけだということがわかった。
スマホがあると、依存症みたいになってしまうし、人の集中力の邪魔をする道具でもある。
だからといって、使用をやめるわけにはいかない。
この本を読んで、「では、いかにスマホを上手につかおうか」ということを考えた。
さすがにこれは難しいことだとわかっているが・・・。
ともかく、今日も明日もあさっても、スマホは手元にある。
お酒を飲みすぎる人にはよく「酒は飲んでも飲まれるな」と言う人がいる。
同じように「スマホを使っても、スマホに使われるな」と自分を戒めていきたいところだ。