2024年本屋大賞受賞作「成瀬は天下を取りにいく」。
表紙には若い女の子が描かれ、そのタイトルからもどこか風変わりな物語の予感が漂う。
実際読んでみると、さくさく読めて引きこまれ、気づけば最後のページまで一気読み。
つまり、とてもおもしろい作品だった。
そんな「成瀬は天下を取りにいく」の感想を書いてみたい。
「成瀬は天下を取りにいく」作品情報
著者
宮島未奈(みやじまみな)
著書に
- 成瀬は天下を取りにいく(2023年3月)
- 成瀬は信じた道をいく(2024年1月)
- 婚活マエストロ(2024年10月)
がある。
2024年に「成瀬は天下を取りにいく」で第39回坪田譲治文学賞受賞、2024年本屋大賞受賞。
内容
物語の舞台は2020年、中学2年生の夏。コロナ禍で閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映ることを目標に掲げた成瀬。その行動を皮切りに、彼女の奇想天外な挑戦が次々と展開していく・・・。
「成瀬は天下を取りにいく」の感想
まず、この本を読んで感じたことは、その読みやすさ。
平易な文体ということもあるだろうが、物語にかなり引き込まれる。
これも作者の文章力のなせるわざなのだろうか。
おかげで、最後まで一気に読むことができた。
さて、そんな作者の文章力でぐいぐい読まされる「成瀬は天下を取りにいく」。
その成瀬は相当変わっている。
友だちの島崎にいきなり「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」と言っちゃうところ。
西武に捧げるってなんのこっちゃって感じ。
実は成瀬が住む西武大津店が8月31日に閉店となる。
成瀬は、その西武に毎日通おうというのだ。
しかも、西武大津店で生中継されるワイドショーに毎日映ろうとするのだ。西武ライオンズのユニホームを着て。
それが中学2年生のときのことである。
その後も成瀬は「お笑いの頂点を目指そう」と言い出し、島崎を巻き込んで漫才の練習を始めることになる。
ほんと変わった女の子だ。
そんな変わった成瀬の目標が200歳まで生きることだっていうのもすごいところ。
その目標が本気だということも発言からうかがえる。
成瀬がすごいと思うのは、とても前向きなところだ。
目標が高いのもそうだが、目標が達成しても落ち込んだりしない。
成瀬はこう思っているとのこと。
大きなことを百個言って、ひとつでも叶えたら、「あの人すごい」になるという。だから日頃から口に出して種をまいておくことが重要なのだ
なんだか、私自身が成瀬から挑戦することの意義を教わった気がする。
そんな成瀬だが、本書の最終章「ときめき江州音頭」ではその内面を知ることができる。
端から見るとスーパーウーマンで弱みなど見せないのだが、この章ではけっこう彼女の動揺を見ることができておもしろい。
この最終章があるから、成瀬のことをより深く知ることができた。
最後まで読み終わったときは「もう終わっちゃったのか」という気分だった。
それだけおもしろかったし、成瀬が魅力的だったのだ。
たぶん、この本は大人が読んでも子どもが読んでもおもしろいんじゃないかなと思う。
この本の満足度とまとめ
✩✩✩✩★(星5つ中4つ)
主人公成瀬あかりがとてもおもしろいし、それに振りまわされるまわりの人たちもまたおもしろい。
4つにした理由は、感動という点が不足していたからかな。
これは個人の好みだと思う。
だが、読みやすいし、物語に引き込まれるし、まだ未読の人にはぜひおすすめしたい。