「このミステリーがすごい!」、「ミステリが読みたい」、「本格ミステリ・ベスト10」などの数々のミステリーランキング1位を取った「地雷グリコ」。
ミステリー小説に飢えていた私にとって、絶好の獲物だった。
さっそく手にとって読んでみると、ページをめくる手がとまらない。あっという間に読み終わってしまった。
次のページが気になる小説というのはこんなのをいうのだろう。
そこで、さっそくこの小説の感想を書いてみたいと思う。
「地雷グリコ」作品情報
著者
青崎有吾(あおさきゆうご)
1991年神奈川県生まれ
著書に
- 体育館の殺人
- 水族館の殺人
- 風ヶ丘五十円玉祭りの謎
などがある。
内容
主人公は射守矢真兎(いもりや・まと)。勝負事に強い女子高生。
高校生活を送っている中で、勝負事に巻き込まれていく。
勝負はなじみのあるゲームをちょっと改良したもの。だが、そのゲームは奥が深くて対戦相手との心理戦となっていく。
物語は全5篇。それぞれ異なるゲームがテーマになっている。
例えば最初のゲームは「地雷グリコ」。じゃんけんをして「グー」で勝ったら「グリコ」と言いながら3歩歩く、「チョキ」で勝ったら「チヨコレイト」と言いながら6歩歩くというルールがベース。だが、途中で地雷が仕掛けられていて(本物ではない)、地雷を踏んだら下がらなければいけない。
射守矢真兎は、目の前に現れる強敵と戦わなければならない。そして、最後に現れるのは・・・。
「地雷グリコ」の感想
「ミステリーが読みたい」、そう思って手に取った「地雷グリコ」。
迷宮入りの殺人事件や、名探偵の活躍を期待していた私だったが、事件が起きない?
え?ただの学園モノのゲームバトル?
もしかして選択ミス?
ところが、これがとんでもなくおもしろい。
気づけば、先の展開が気になってページをめくる手が止まらなくなっていた。
この物語は基本、射守矢真兎(いもりや・まと)と誰かがゲームで戦うというストーリー。
この真兎の戦い方が最高におもしろい。相手の思考を何手先までも読み、あえて自分が不利なように見せかける。
「勝った」と思わせることまでも計算に入っているのだ。
マンガ「DEATH NOTE」の、夜神月vsL(エル)のようなハイレベルな読み合いに思わずゾクゾクした。
さらに、作者はこんなゲームをよく考えるなぁと思った。
まず、この作品のタイトルである「地雷グリコ」。
これは、じゃんけんをして前に進んでいく「グリコ」の改良版だ。ただちがうのは、地雷があること。相手に地雷を踏ませたら下がらなければならない。
どこに地雷をしかけるのか、どこにしかけられているのか、その読み合いが見どころだ。
そしてこのゲームの終盤は「いったい何がおこったんだぁ」という事態に遭遇する。
また、「坊主衰弱」という百人一首の絵札をつかった神経衰弱があったり、じゃんけんにあるルールを追加した「自由律ジャンケン」というのもある。
いずれも緊張感あふれる心理戦になっている。
どのゲームも目が離せない。
読むものは物語に没頭するだろう。
読み終えたときには「そういうことだったんだね」ときっちりと伏線も回収される。
見事だなぁ。
「地雷グリコ」はただのゲーム小説ではない。
どのゲームも心理戦となっていて、ともに戦っている気分になる。
いくつものミステリー小説ランキング1位を獲得するのも納得できる内容だ。
この小説の満足度とまとめ
☆☆☆☆☆(5点満点中5点)
射守矢真兎という魅力的なキャラクターが、超絶的な強さでゲームに挑む様子。
対戦相手との緊張感いっぱいの心理戦。
そして、物語に出てくるゲームの緻密さ。
それらが私を完全に引き込んだ。
「こんなゲーム、実際にやってみたい」と思わせるほどのおもしろさ。
こんな小説に出会えてよかったと思う。