文学日記

北の海(中原中也)の感想

詩を読んでいれば、中原中也にハマる人もいるだろう。 わたしもまた若い頃、中原中也にハマった。 きっかけは高校生の頃。 国語の先生の紹介したこの詩が中原中也との出会いだ。 北の海 海にゐるのは、 あれは人魚ではないのです。 海にゐるのは、 あれは、…

まんさくの花 〜春のきざしをとても感じる詩〜

ときが経つのは早いもので、私ももういい年齢になってしまった。 人生のゴールまですでに折り返し地点を過ぎている。 残された人生を、日々大切にしていきたいものだ。 最近、季節の移り変わりも、すごく早く感じる。 春の気配を感じ、桜がもうすぐ咲くかな…

ある仕合せ者 〜彼は誰よりも単純だった〜(侏儒の言葉より)

芥川龍之介の「侏儒の言葉」にこんなことが書いてあった。 ある仕合せ者 彼は誰よりも単純だった 幸せってなんだろう? むかし、明石家さんまさんが、コマーシャルで しあわせーってなんだっけ、なんだっけと歌っていた。 今から30年以上前の歌なのに、今…

君がゆく海辺の宿に霧立たば・・・〜嘆きの息〜

日本最古の和歌集「万葉集」には恋の歌がたくさんある。 好きな和歌はいくつもあるが、これはなかなかよい。 君が行く 海辺の宿に 霧立たば 吾が立ち嘆く 息と知りませ 初めてこの和歌を知ったのは、大学の授業だった。 先生が新聞紙を広げて、広告欄にこの…

「幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく」を読んだときの私の気持ち

教科書か問題集か忘れてしまったが、この若山牧水の短歌がけっこう登場するので自然におぼえてしまった。 幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく この短歌、なぜか私の心に入り込んでくる。 数々の名歌の中でも若山牧水の短歌は特に私の心に…

「相思はぬ人を思ふは大寺の餓鬼のしりへに額づくごとし」:私の青春は片想いしかなかった

私の片想いの記憶、 それはまず、中学3年生にさかのぼる。 当時、好きだった女の子は私の親友が好きだった。 その親友は、スポーツが得意で明るく、モテるタイプの男の子。 勉強もスポーツもできない私が太刀打ちできるわけもない。 私の恋は当然、実らなか…

「犬」(八木重吉)が、私にとって詩との出会いだった

わたしと詩の出会い、それは八木重吉だった。 高校生の頃、国語の授業で詩を書いた。 いや、書かされた。 どんな詩を書いたかは忘れたが、短い詩だった。 詩の書き方もわからぬまま、ただ思うままに書いた。 私の拙い詩を読んだ先生は一言、 「八木重吉みた…

「生命は」(吉野弘)を読んで、自分の存在について考えた

若い頃、人生の目的についてずっと考えていたことがあった。 自分はなんのために生きているのだろうか、そして命とは何かと。 生きる意味ってあるのかなぁと真剣に悩んだこともあった。 そんな私だから、このまま死んでもいいのではないかと思っていた時期も…

太陽も死もじっと見つめることはできない(ラ・ロシュフコー)について

先日、職場の先輩が亡くなった。 いまの職場に来てもうすぐ10年になるが、先輩はすでにそこで働いていて、いろいろお世話になった。 先輩は亡くなる前日も働いていたので、誰もが彼の死など考えてもいなかっただろう。 私も先輩とは仲がいいほうだったので…

「ぞうさん ぞうさん おはながながいのね…」の歌は、母親を誇りに思う歌なのです

先日、芥川龍之介の「鼻」を読んでいたら、なぜか突然「ぞうさん」の歌を思い出した。 「ぞうさん、ぞうさん・・・」で有名なあの歌を。 芥川の「鼻」は、長い鼻の持ち主の禅智内供の話だ。 内容はご存知のとおり、彼が劣等感を持っているその長い鼻を、ふつ…

世の中を何にたとへむ朝ぼらけ漕ぎ行く舟の跡の白波(沙弥満誓)の和歌から思ったこと

沙弥満誓という歌人が詠んだ、こんな和歌がある。 世の中を何にたとへむ朝ぼらけ漕ぎ行く舟の跡の白波 私はこの和歌を読んだあと、なんとなくさみしくなってしまった。 人生ってなんだろうとか、この世界ってなんだろうとか・・・。 今回、私がさみしくなっ…

「恋愛はただ性欲の詩的表現を受けたものである」という芥川龍之介のことば

高校生の頃、恋愛について一生懸命考えていた時期があった。 「愛するってどういうことなのか」とか「恋愛と結婚は別なのか」とか、または「恋と愛のちがいは何なのか」とか。 いろいろ考えるのが青春時代ってやつかもしれないが、恋愛に関してはとにかくた…

「学校遠望」(丸山薫)という詩はきれいだがどこどなく悲しい詩だ

みんな学生時代の思い出って輝いているのかな? この詩を読むと、そんな思いを抱いてしまう。 学校遠望 丸山薫 学校を卒(お)へて歩いてきた十幾年 首(こうべ)を回(めぐ)らせば学校は思ひ出のはるかに 小さくメダルの浮彫のようにかがやいている そこに…

「あどけない話」は高村光太郎の愛情たっぷりの詩です

空って不思議! 青空を見ていると心が温かくなり、曇り空を見るとちょっと憂鬱になったりする。 雲ひとつない真っ青な空を眺めるのも気持ちいいし、流れる雲を眺めたりするのもまたおもしろい。 やっぱり空って不思議だ。 それに、いろんな歌に空が登場する…

「人言を繁み言痛み・・・」という和歌をいまだに忘れられない。

ことばの暴力って最近聞くようになったフレーズで、むかしはそんなになかったような気がする。 現代社会は昔より陰険になってきたような気がする。肉体的な暴力はもちろんだめなわけだが、ことばの暴力は案外自分でも知らぬ間にみんなやっているのかもしれな…

ふるさとは遠きにありて思ふもの・・・」:父と話をするといつも思い出してしまう詩だ

昨日、久しぶりに父と話をして・・・ まあ、親としても、息子がコロナにかかっていないか心配なようで・・・ ちょっとさみしい部分もあるのかな、息子と半年以上もあってないので・・・。 そんなわけで、少々電話で話した。 でも、投げかけてくることばは辛…

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ:人の心の根源はさみしさである

俵万智さんの短歌で有名なのがこちら。 「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ たしか学校の教科書にも載っていたはず。 この短歌、めっちゃ共感しちゃうんだけど、多分みんなもだよね? 今回、この短歌について思ったことをみるこ…

牟礼慶子「見えない季節」を読んで、くらい気持ちをなんとか変えたいと思った

最近読んだ詩が、妙に心にひっかかって何度も読んでしまった。 作者は牟礼慶子さんというかたで、私が国語の先生をしていた頃に、この詩が問題として出題されていた。 そのときはどうやって生徒たちに理解させようかということばかり考えていたので、あんま…

吉野弘「過」という詩を読んで、ちょっと考えさせられたこと

吉野弘っていう詩人がいて、教科書なんかに詩が載っかっていたりする。 「奈々子に」とか「虹の足」とかが有名な詩なのかな。 それで数年前に吉野弘の詩集を買って読んでみたんだが、これがなかなかよい。ひとつひとつ考えさせられるものが多い。 最近、ちょ…

銀(しろかね)も金(くがね)も玉も・・・、(万葉歌人・山上憶良):和歌の意味と思ったこと

万葉集を愛するみっちーです。 万葉集の中でもとりわけ有名な、山上憶良の子どものことを詠んだ和歌。これは教科書にも採用されるほどです。 最近、思うところがあって、この和歌がなんとなく好きになってきました。今回のブログでは、山上憶良の「子等を思…

年を重ねただけで人は老いない(「青春」より):私の好きことば

趣味はことば集め!!! みっちーです。 ことばは人をやる気にさせるし、喜ばせたりもしてくれます。 それではさっそく、私の好きなことば紹介したいと思います。 今回のことば このことばを知ったきっかけ 年を重ねるということ このことばを知って思ったこ…