文学日記

「生命は」(吉野弘)を読んで、自分の存在について考えた

若い頃、人生の目的についてずっと考えていたことがあった。 自分はなんのために生きているのだろうか、そして命とは何かと。 生きる意味ってあるのかなぁと真剣に悩んだこともあった。 そんな私だから、このまま死んでもいいのではないかと思っていた時期も…

太陽も死もじっと見つめることはできない(ラ・ロシュフコー)について

先日、職場の先輩が亡くなった。 いまの職場に来てもうすぐ10年になるが、先輩はすでにそこで働いていて、いろいろお世話になった。 先輩は亡くなる前日も働いていたので、誰もが彼の死など考えてもいなかっただろう。 私も先輩とは仲がいいほうだったので…

「ぞうさん ぞうさん おはながながいのね…」の歌は、母親を誇りに思う歌なのです

先日、芥川龍之介の「鼻」を読んでいたら、なぜか突然「ぞうさん」の歌を思い出した。「ぞうさん、ぞうさん・・・」で有名なあの歌を。 「鼻」といえば、長い鼻の持ち主の禅智内供の話だ。 内容はご存知のとおり、彼が劣等感を持っているその長い鼻を、ふつ…

世の中を何にたとへむ朝ぼらけ漕ぎ行く舟の跡の白波(沙弥満誓)の和歌から思ったこと

沙弥満誓という歌人が詠んだ、こんな和歌がある。 世の中を何にたとへむ朝ぼらけ漕ぎ行く舟の跡の白波 私はこの和歌を読んだあと、なんとなくさみしくなってしまった。 人生ってなんだろうとか、この世界ってなんだろうとか・・・。 今回、私がさみしくなっ…

「恋愛はただ性欲の詩的表現を受けたものである」という芥川龍之介のことば

高校生の頃、恋愛について一生懸命考えていた時期があった。 「愛するってどういうことなのか」とか「恋愛と結婚は別なのか」とか、または「恋と愛のちがいは何なのか」とか。 いろいろ考えるのが青春時代ってやつかもしれないが、恋愛に関してはとにかくた…

「学校遠望」(丸山薫)という詩はきれいだがどこどなく悲しい詩だ

みんな学生時代の思い出って輝いているのかな? この詩を読むと、そんな思いを抱いてしまう。 学校遠望 丸山薫 学校を卒(お)へて歩いてきた十幾年 首(こうべ)を回(めぐ)らせば学校は思ひ出のはるかに 小さくメダルの浮彫のようにかがやいている そこに…

「あどけない話」は高村光太郎の愛情たっぷりの詩です

空って不思議! 青空を見ていると心が温かくなり、曇り空を見るとちょっと憂鬱になったりする。 雲ひとつない真っ青な空を眺めるのも気持ちいいし、流れる雲を眺めたりするのもまたおもしろい。 やっぱり空って不思議だ。 それに、いろんな歌に空が登場する…

「人言を繁み言痛み・・・」という和歌をいまだに忘れられない。

ことばの暴力って最近聞くようになったフレーズで、むかしはそんなになかったような気がする。 現代社会は昔より陰険になってきたような気がする。肉体的な暴力はもちろんだめなわけだが、ことばの暴力は案外自分でも知らぬ間にみんなやっているのかもしれな…

ふるさとは遠きにありて思ふもの・・・」:父と話をするといつも思い出してしまう詩だ

昨日、久しぶりに父と話をして・・・ まあ、親としても、息子がコロナにかかっていないか心配なようで・・・ ちょっとさみしい部分もあるのかな、息子と半年以上もあってないので・・・。 そんなわけで、少々電話で話した。 でも、投げかけてくることばは辛…

牟礼慶子「見えない季節」を読んで、くらい気持ちをなんとか変えたいと思った

最近読んだ詩が、妙に心にひっかかって何度も読んでしまった。 作者は牟礼慶子さんというかたで、私が国語の先生をしていた頃に、この詩が問題として出題されていた。 そのときはどうやって生徒たちに理解させようかということばかり考えていたので、あんま…

吉野弘「過」という詩を読んで、ちょっと考えさせられたこと

吉野弘っていう詩人がいて、教科書なんかに詩が載っかっていたりする。 「奈々子に」とか「虹の足」とかが有名な詩なのかな。 それで数年前に吉野弘の詩集を買って読んでみたんだが、これがなかなかよい。ひとつひとつ考えさせられるものが多い。 最近、ちょ…

銀(しろかね)も金(くがね)も玉も・・・、(万葉歌人・山上憶良):和歌の意味と思ったこと

万葉集を愛するみっちーです。 万葉集の中でもとりわけ有名な、山上憶良の子どものことを詠んだ和歌。これは教科書にも採用されるほどです。 最近、思うところがあって、この和歌がなんとなく好きになってきました。今回のブログでは、山上憶良の「子等を思…