人間の思考にはクセがあるようだ。自分では公平に考えているつもりでも偏っていたり、論理的に考えているつもりでも非論理的になっているようである。
そのクセを「認知バイアス」と呼ぶらしい。人間にはいろんな認知バイアスがあり、しばしば合理的判断に欠く。もちろん私など不平等かつ自分勝手な判断をしていることは否定できない。
しかし、そんな思考のクセを知っておけば自分を修正できるし、他人の判断を理解することもできる。
そして、人間にはどんな思考のクセがあるのかわかりやすく解説しているのがこちらの本だ。
読んでる最中は、なるほどと思ったり、そうなの?と思ったり、いろいろ勉強になった。
今日は、この本の感想を書いていこうと思う。
「自分では気づかない、ココロの盲点」の情報
筆者
池谷裕二(いけがやゆうじ)
1970年生まれ、静岡県生まれ。
薬学博士。
現在、東京大学薬学部教授。脳研究者。
主な著書
「脳には妙なクセがある」(扶桑社)
「パパは脳研究者」(扶桑社BOOKS新書)
出版情報
発売日:2016年1月21日
「自分では気づかない、ココロの盲点」の感想
とてもわかりやすい構成だった
この本は、認知バイアスについて80の項目に分けてあり、筆者が問題を出題し、それに対する解答と解説をするような構成になっている。
専門書のような重厚な内容というわけではなく、素人にもわかりやすくなっているのが特徴といってよい。
目次は
1 大は小を兼ねる
選択肢過多効果(Choice Overload Effect)
2 思慮深い行動
熟慮の悪魔(The Devil in the Deliberation)
3 麗しきあの方
(以下略)
というようになっていて、ひとつのテーマにつき、ひとつの認知バイアス用語が添えられている。
だから、あとでこの本を見返すとき、「あれはどこだっけ」と思っても探しやすいし、中身をわざわざ見返さなくても目次だけで認知バイアス名を思い出すことができるのもよい。
筆者が「気軽な体裁をとってはいますが、内容は本格的です」というように、一般人が読んでも専門家が読んでも納得できるようになっていると思う。
さらに、巻末には「推薦図書」「錯視用語集」「認知バイアス用語集」などがあって、とても親切だ。
推薦図書などを参考にしてもっと勉強したいし、認知バイアス用語集を見てもっと理解を深めたいと思った。
内容がめっちゃ勉強になった
私は認知バイアスの素人であり、もともと認知バイアスのことなど知らなかったのでとても勉強になった。
たとえば、最初の項目はこの問題が始まる。
デパートの試食販売コーナーでジャムを売りました。
次のどちらのブースの売り上げが多かったでしょうか。
①6種類のジャムを販売するブース
②24種類のジャムを販売するブース
これはなぞなぞ?と思うくらい難問で、これのどこに人間の思考のクセがあるのだろうかと考えてしまった。
ふつうに考えれば品揃い豊富な「24種類のジャムを販売するブース」の売り上げが多いかと思いきや正解は「6種類」のほうだ。
「6種類」を選んでしまう人間の思考のクセの根拠はこんなところにある。
脳が同時に処理できる情報量は有限です。許容量を超えると、選ぶこと自体をやめてしまいます。
品揃いが豊富なほうがたくさん売れると思って、選択肢をたくさん用意すると、逆に選びたくなくなるのが人間の脳なのだ。
これはたしかに思い当たる。人に何かを選んでもらうときに、たくさんの中から選んでもらうより選択肢を絞ったほうが選んでもらいやすくなるからだ。
また、こちらも役に立つ問題。
来週テストがあります。英単語を暗記しなくてはなりません。
どちらの勉強方法がより記憶に定着するでしょうか。
①単語リストをしっかり眺めて、繰り返し頭に叩き込む
②繰り返し確認テストを解いてみる
答えをここに書くのはやめておくが、この問題は人間の記憶はどうすれば定着するのかがわかる内容だった。
何か記憶に定着させたい場合、この項目を思い出して記憶していけばよい。
この本をきっかけにしていろんな本を読むといいかもしれない
この本は認知バイアスの辞書的な役割をしているように思う。あるいは認知バイアス辞典みたいなものといっていいかもしれない。
だから、この本をきっかけにいろんな類書を読んでみるのがいいと思う。
幸いにして、推薦図書までついている。
たまたま以前買って読んでなかったダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」などが推薦図書に入っていたので読んでみようと思う。
最後に
人間の思考や判断がこんなふうに行われてしまうのかと思わされた「自分では気づかない、ココロの盲点」という本。
読んでみて参考になることだらけだった。
おそらく仕事や実生活においてつかえることが多いだろう。この本の内容を思い出して、自分の思考のクセに気づいてみたいと思う。