映画「娘は戦場で生まれた」感想:アレッポの悲惨さをみんなに知ってほしい

私は戦争のドキュメンタリー映画をなるべく観るようにしている。なぜなら、この平和な日本において戦争など無縁だからだ。

 

戦争と無縁ならば観る必要もないという人がいるだろうが、私はそう思わない。

 

平和な世の中にいると平和のありがたみがわからない。日本はかつて、他国にひどいことをして、または他国からひどいことをされたというのに、その痛みを感じている人は少ない。

 

世界で初めて原爆が落とされたというのに、そんなことは忘れてしまったかのように、現代社会の時計の針は動いている。

 

そう思うから、あえて私は戦争に触れてみたいと思った。

 

この作品も、相当ひどい。つい最近の出来事とは思えないほどひどい。そんなドキュメンタリー映画の感想を、今回は書いていきたい。

 

 

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作品情報

 

【公式ツイッター

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監督はワアド・アルカティー。この映画のカメラを回しつつ、戦場で生まれた娘のお母さんをやっている。

 

そして、もうひとりの監督はエドワード・ワッツ。ワアドが撮影したものを一本の映画にする手助けをした。

 

それからワアドの旦那さんがハムザ。医師を目指すハムザと出会い結婚して夫婦となる。そして2人の間に生まれたのが娘のサマである。「サマ」というのはアラビア語で「空」を意味するそうだ。

 

なお、この作品は、2012年から2016年までのアレッポという都市の様子が映像に収められている。

 

アレッポはシリア北部にあるシリア最大の都市。2011年にシリアで内戦が勃発し、アサド政権対反政府軍の戦いで、市街は激しい銃撃戦が勃発していた。

 

さらにロシアなどの介入もあり、空爆なども激しくなっていったのだ。

 

銃撃戦や空爆の中で、アレッポの市民は暮らしている。その様子を、監督のワアドが撮った記録がこの作品というわけである。

 

 

内容

 

ジャーナリストに憧れる学生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホでの撮影を始める。しかし、平和を願う彼女の想いとは裏腹に、内戦は激化の一途を辿り、独裁政権により美しかった都市は破壊されていく。

そんな中、ワアドは医師を目指す若者ハムザと出会う。彼は仲間たちと廃墟の中に病院を設け、日々繰り返される空爆の犠牲者の治療にあたっていたが、多くは血まみれの床の上で命を落としていく。非情な世界の中で、二人は夫婦となり、彼らの間に新しい命が誕生する。

彼女は自由と平和への願いを込めて、アラビア語で“空”を意味する“サマ”と名付けられた。幸せもつかの間、政府側の攻撃は激しさを増していき、ハムザの病院は街で最後の医療機関となる。明日をも知れぬ身で母となったワアドは家族や愛すべき人々の生きた証を映像として残すことを心に誓うのだった。すべては娘のために――。

映画「娘は戦場で生まれた」公式サイトより引用

 

簡単に言うと、

ワアドが激しい空爆で破壊されていく街の中で、結婚し、子どもを産み、その子ども育てながら、街の様子や人々を記録していく

という内容。

 

 

感想

 

アレッポの街はかなり悲惨で、まさに地獄絵図と言っても言い過ぎではないほどだった。これは日本人も観るべき映像だ。

 

アレッポはシリア最大の都市だけあって内戦が始まった頃の映像を見る限りかなり活気があるように見えた。

 

ところが内戦が激しくなり、空爆が行われた途端、街がどんどん破壊されていった。

 

そして、最後の方は絵に書いたような廃墟となっていった。

 

それくらい悲惨な街アレッポで、アサドはカメラを回し続けた。

 

どのくらい悲惨かは、文章では伝わらない。映像だからこそアレッポの酷さが伝わった。

 

なぜ文章では伝わらないかというと、そんな世界を見たことがないために想像できないからだ。

 

だって、空爆を受けて今にも死にそうになっている子どもの姿を想像できるだろうか。

 

目の前にいる幼い弟の死を目の当たりにしてしまった兄の顔など想像できるだろうか。

 

瀕死の状態で病院に運ばれた妊婦を帝王切開し、その中から仮死状態の胎児を蘇生させる姿など想像できるだろうか。

 

日本に住んでいる限り絶対に起きなさそうなことが、かなりの頻度で起きてしまうのがアレッポだ。

 

ゆえに、何が起きているかなど全然想像もつかない。この作品を見ない限りは。

 

アレッポはそれほどの地獄絵図なのだ。

 

日本にのほほんと暮らしている私たちは、一度、この世界を観てみたほうがいい。

 

世界のどこかでこんなひどいことが行われているということを知っておいたほうがいい。

 

そして、みんなでこのひどい行いを止めることができたらいいなぁと思う。

 

日本人よ、もっと世界を見ようではないか。

 

 

 

「娘は戦場で生まれた」を鑑賞後に感じたこと

 

戦争は殺人だ。罪もない人の命を一瞬で奪っていく殺人だ。

 

権力争い、領土争い、メンツをかけた争い、いろいろあるだろう。しかし、すぐに死んでいくのは武器を持たない弱い者たちだ。

 

戦争で犠牲になるのはたいていの場合、庶民であり、末端の人々だ。

 

ここアレッポでは大勢の子どもや女性が犠牲になった。そんなことがあっていいのだろうか。

 

かつて日本でも戦争があり、空襲にあったり原爆を落とされたりしたが、亡くなったのは庶民だ。

 

特に原爆が投下され、一瞬で大勢の日本人が亡くなった。

 

それが戦争だ。

 

戦争は殺人に他ならない。戦争はしてはならない。戦争で犠牲になるのは庶民だから。

 

 

おすすめ度

 

この作品は、みんなに見てほしい。そんな願いを込めて・・・

☆☆☆☆☆(☆5つ)