紙の月(角田光代)のあらすじと感想:ドキドキの世界にこんにちは!

角田光代さんが書いた「紙の月」。実は、この作品、まったくのノーマークだった。

 

たまたまフォロワーさんが読んでいたのを見かけて、私も読んでみようと思っただけだ。

 

そのフォロワーさんいわく「ドキドキの世界」とのこと。

 

そんなドキドキならば読んでみようと思ったわけなんだが、結果ドキドキが待っていた(汗)

 

紙の月 (ハルキ文庫)

紙の月 (ハルキ文庫)

 

 

それでは「紙の月」について、書いていきたいと思う。

 

 

「紙の月」作品情報

著者

角田光代(かくたみつよ)

神奈川県横浜市出身。

小説家。

1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。

1996年、「まどろむ夜のUFO」野間文芸新人賞受賞

1997年、「ぼくはきみのおにいさん」坪田譲治文学賞受賞

1999年、「キッドナップ・ツアー」産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞

2000年には同作品で路傍の石文学賞受賞

2003年、空中庭園婦人公論文芸賞受賞

2005年、対岸の彼女直木賞受賞

2006年、「ロック母」川端康成文学賞受賞

2007年、「八日目の蝉」中央公論文芸賞受賞

2011年、「ツリーハウス」伊藤整文学賞受賞

2012年、「紙の月」柴田錬三郎賞受賞「かなたの子」泉鏡花文学賞受賞

2014年、「私のなかの彼女」河合隼雄物語賞受賞

 

ていうか、受賞歴すごっ!!!

 

あらすじ

ただ好きで、ただ会いたいだけだった――わかば銀行の支店から一億円が横領された。容疑者は、梅澤梨花41歳。25歳で結婚し専業主婦となったが、子どもには恵まれず、銀行でパート勤めを始めた。真面目な働きぶりで契約社員になった梨花。そんなある日、顧客の孫である大学生の光太に出会うのだった……。

Amazon より引用)

 

主人公は梅澤梨花。この物語は彼女がタイにいたところから始まる。

 

彼女は、自分が勤めている銀行で横領をして逃げてきたのだ。

 

まじめでみんなに信頼される彼女が、なぜそんな大金を横領してしまったのか。

 

いったい彼女は何にお金をつかったのか、それが次第にあきらかになっていく・・・。

 

 

「紙の月」感想

 

ぐいぐい読まされた文章だった

文庫本にして359ページ、なかなかの長さの作品だ。本の中身を覗いてみるとそれほど改行も多くされていないので、けっこう文字がびっしりとしたイメージだ。

 

それなのに、ぐいぐい文章を読まされてしまった。物語の世界にどんどん引き込まれてしまうのだ。

 

それもそのはず、角田光代さんは直木賞をはじめとして数々の文学賞を受賞するほどの文才を持っている人なのだ。

 

まじめで仕事熱心で顧客思いの梅澤梨花が、どんどんドツボにはまっていく姿に読者はドキドキしていく。角田さんに心を握られたような感じだ。

 

没入感が半端ない文章、それがこの作品の印象だ。

 

お金の怖さを目の当たりに

実はこの物語、お金をどんどん使ってしまうのは主人公だけではない。

 

他の登場人物も、気がついたら一瞬のうちに数万円の買い物をしてしまうというシーンがある。

 

クレジットカードのように後払いで決済する場合、「まだだいじょぶだろう」と軽い気持ちで使ってしまったことがある人は少なくないはずだ。

 

私がクレジットカードを持ち始めた頃、とても慎重であまり使わなくて現金主義だった。いまとちがって現金でやり取りするのがふつうだったということもあるだろう。

 

しかし、一度クレジットカードを使って、その便利さに慣れてしまうと、派手に使ってしまった記憶がある。

 

そういうば、そのむかし、学生の頃の話だが、マルイのカードというものがあった。

 

そのカードはクレジットカードのようなもので、お金がなかったらそのカードでキャッシングができるものだった。

(いまはエポスカードというらしい)

 

あの頃は貧乏だったので、返せるあてなど考えず、とにかく借りてしまったこともあった。 

 

もし、私がショッピングにハマっていたらおそらくお金を返せない事態が起きていたかもしれない。

 

簡単にお金を借りることができるシステムというのは恐ろしいものだし、カードひとつでたくさん買い物ができるというシステムは危険だなぁと思う。

 

悪いことが一度バレずにすむと次もやってしまう

主人公の梅澤梨花が、最初に会社のお金に手を出したのは、買い物をした際に自分の財布にお金がなかったからだ。

 

そのあとすぐにATMでお金をおろして、もとに戻している。

 

厳密にいえば、その行為自体いけないことだろう。会社のお金を私的に使っていいわけがない。

 

しかし、この場合はすぐにもとに戻しているのでそんなに責められることでもないだろう。

 

でも、そんな些細なことでも一度やってしまうと癖になってしまうのだ。本当にそれが怖い。

 

私は会社のお金に手を出したことはないのだが、家族のお金を使ってしまったことがある。

 

幼い頃に、ガチャガチャにハマってしまい、お小遣いのすべてをそこに注ぎ込んだ。しかし、やってもやってもいろんな種類があるので、お金が足りなかった。

 

私はどうしてもやりたくて、兄の貯金箱からお金を取り出した。

 

当時のガチャガチャは1回20円だったと思う。私は10円玉を2枚貯金箱から取り出し、ガチャガチャをやりにいった。

 

しかし、やっぱり他にもほしいものがあり、どんどん兄の貯金箱からお金を取り出していった。

 

おそらく10回くらいやってバレたのだと思う。

 

金額にしたら大したことはないのだが、私は兄のお金を盗んだということでこっぴどく叱られた。

 

悪いことというのは一度バレないと癖になる。

 

私は、幼い頃の経験から、幸いにしてお金に関する悪いことはできない。それはラッキーだった。

 

しかし、あの時、バレずにうまくやっていたら、大人になっても悪いことをやっていたかもしれないと思うとちょっと怖い。

 

たぶん世の中の犯罪者も、最初は軽い気持ちだと思う。しかし悪いことをするのが癖になってしまったにちがいない。

 

梅澤梨花だってそうだ。

 

あることがきっかけで、お金が必要になってしまった。そこが彼女の悪夢の始まりだったわけだが、最初は彼女もうまくいくと思っていたにちがいない。

 

コントロールだってできていたはずだ。

 

しかし、そのお金の使い方がどんどん派手になってしまっていた。あとは階段を転げ落ちるように、取り返しがつかなくなってしまったのだ・・・。

 

一歩まちがえると、本当にこわいものなのだ。

 

 

最後に

 

フォロワーさんが言ってた「ドキドキの世界」というのは読んでみてわかった。

 

どんどんドツボにハマっていく様子が克明に描かれているのだ。

 

そんなことやっちゃうの?

あんなこともやっちゃうの?

やりすぎちゃうか?

 

天の声になって、梨花にそう言いたかった。

 

でも、それはかなわない。もう彼女はなるようにしかなかったのだ。

 

そんなドキドキ感を、このブログを読んでくれた人にも味わってもらいたいと思う。

 

読み始めたらあっという間。ページをめくる手がどんどん早くなるので、ぜひお試しあれ!

 

紙の月 (ハルキ文庫)

紙の月 (ハルキ文庫)